団 長 挨 拶

第26回海外都市行政視察に参加して

赤平市長   親松 貞義


○はじめに
 このたび、北海道市長会の海外都市行政視察に参加の機会を得た。調査団の皆さんのご協力で、当初の目的がおおむね達成出来ましたことに感謝しております。
 環境問題をはじめ、少子高齢化や福祉、更には地域経済を支える産業や観光などについてがテーマでありましたが、先進国ヨーロッパにおける実情については、大いに関心があるところであり、出来るだけ多くのことを学び吸収し、その成果を持ち帰りたいとの思いで出発しました。

● 総体的な印象でありますが、各国に共通しているのが、当然のことながら歴史の重みであり、その中での価値観の違いのようなものが感じられました。
 私達は、一般的にテレビや写真などを通じ、ヨーロッパの風景や建物の情景を知り想像をしておりますが、それぞれの国に降り立ち身近に接し、改めて言葉や文字で表すことの出来ない重圧のようなものさえ感じられました。

● 各国の現状や実施されている政策など、更に考え方の基本にあるものは、これら長い歴史の中から生まれ、また、何度も手を加えられ、今日に至っているように受け止めてきました。従って、わが国との比較においても、これらのことを念頭に置く必要があるものと思います。

● 以下、各テーマや、各国の実情については、調査団の報告に記述されておりますので、私からは各国で受けた印象、その一端について触れることといたします。

●オランダ(アムステルフェーン市)

● 最初の訪問国オランダは、水と緑、そして風車とチューリップの美しい国との思いで訪れました。
 季節的なこともあって、花はあまり見られませんでした。風車も場所によって違うと思いますが、今では観光面などの想いで保存されているようです。
 運河は有名ですが、歴史的建造物と共に独特の景観をかもし出しており、これだけで観光地と云えると思います。
 建物の改築などでは、その都度許可が必要であり、外壁等は常に原型が保たれるよう規制を受けていることは、当然のように思えました。

● 今日、高齢者問題が、共通の課題となっておりますが、私共が訪れた高齢者施設は、理想に近い施設の内容と運営がされておりました。
 日本では一般的に、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームとなっておりますが、当施設は日常的に自立が出来る比較的元気な高齢者が入所されており、それぞれが個室での生活を楽しんでおり、相互のプライバシーも保たれております。

● 道内でも私のマチを含めて、シルバーハウジングが建設されておりますが、これは公営住宅を集合したものであり、管理人は配置されてはいるものの、ケア付とはなっていないところが多く、大変感心させられました。
 当施設では、各種の文化活動、交流の場が設けられており、ボランティア等多くの方々にも支えられております。又、何より周辺には、スーパーをはじめ、日常生活に必要な各商店が一体的に配置されており、その計画的な取り組みには改めて感服いたしました。

● わが国では、補助制度の影響も受け、個別の事業展開となっておりますが、長期的視点に立ち、又、高齢者の生活と自立性を促すため、エリア全体を総合的に考え直すことは、一層重要になっているものと自らも反省させられました。
 オランダでは、住宅公団などが大きな役割を果たしており、わが国に置き換えた場合、国、地方自治体そして民間による総合的な取り組みが求められて来ているように思います。

●フィンランド
(フォルサ市、ヨキオイネン市)


● 北極圏そして森と湖で知られる、ヘルシンキに到着しました。
 ロシア支配の影響を受けて来たことを示す当時の街並みが感じられ、寺院、教会など一つひとつが、その歴史を示しているように思われました。
 この国における女性の社会的進出はめざましく、一方、離婚率も高くなってきているとのことですが、社会的保障もあり全体的に明るく、開放的な感じを受けました。

● フォルサ市では、市長から街の概況について説明を受けましたが、現在は、IT産業を含めて工業化が進んでいるとの印象を受けました。特に、各企業が求める人材の育成に力を入れており、専門学校では、技術の向上を目指した研修の充実には、国が大きなバックアップをしているとのことです。企業の海外進出が進むとともに、優秀な技術も移転しつつあるなか、技術国日本の更なる向上と、
人材の育成のためには日本政府の抜本策を求めたいものです。

● 次いで、農業関係の事情調査のため、農業試験所を訪れ説明を受けましたが、後継者難、市場開放の影響を受ける中で、農業問題については、日本と同様な状況に立たされているとのことでありました。
 このような中で、現在は技術の開発、新たな食品加工など付加価値をつけるための努力が続けられています。

●スウェーデン(ウプサラ市)

● ウプサラ市における環境問題の取り組みについては、調査団の報告書で詳しく述べられておりますが、国全体での環境全般への対応策については、わが国とは大きな格差があるように感じられました。

● スウェーデンでは、過去20年間で二酸化炭素の排出量削減と、再生燃料の使用等で目覚しい改善と成果を挙げて来たとのことであります。又、電気と熱の同時供給についての法律で、ごみの高熱焼却施設については、すべてエネルギーとして供給されているとの説明がありました。
● 日本では、ダイオキシン対策など、全国的に大きな課題となっておりますが、国民全体の意識改革も含めて一層の取り組みが求められていると思います。又、ヨーロッパでも国により違いはあると思いますが、日本よりは、缶やタバコのポイ捨ては少ないように感じられました。
 早期に法律での規制をすると共に、クリーンな日本国を目指す努力を共にし合いたいものと思いますが、どうでしょうか。

●スイス(ザンクトガレン市)

● 市長から市の概況について、説明を受けるため市役所を訪問した。
 市役所は、駅と民間の会社と同じ建物の中にあり、相互に有効活用が図られているとの感じを受けた。
 スイスは、一般的に観光国であり、又、農業や酪農が盛んな国と理解されていると思いますが、農業については、年々生産のコストが高くなり、自給率も低下しているとの説明がありました。

● ザンクトガレン市は、中小企業が多く、各業種を通じた経済交流が盛んに行われており、行政的にもこれらに力を入れているとの話であった。
 この街では、観光面に特段の力を入れていることはないとの説明であったが、しかし、近郊から訪れる人々の数は、相当数になるとのことであります。

● 街の中心部にある文化遺産や、歴史的な図書館、展示会などの各イベント、更に、各種の学会やコンサートなどが、多角的に取り組まれており、それぞれが相乗効果を発揮しているように思われます。
 日本の観光についても、もっとその地域の文化や歴史、更に、その土地や人々とのふれ合いなどが取り入れられたら、よりすばらしいものになるのではなかろうか。一考を要するのでは。

● この日は終日、地元のテレビ、ラジオ、新聞等のいわゆる密着取材を受け、随所でコメントを求められました。
 熱心な取材に驚かされましたが、北に位置するこの地と、私達の住む北海道が今後とも多くの交流が図られ、相互の発展に大きく寄与されることを願っている次第であります。

おわりに

● このたびの調査で、一同多くのことを学ばさせていただきました。心から感謝を申し上げます。
 いま日本は、長引く経済の低迷、更に、分権、改革の中で、各都市における各種施策も大きな変革期を迎えております。
 ヨーロッパ各国には及びませんが、このような時にこそ、各国の歴史や価値観などに多くのことを学ぶとともに、20年、30年、50年先のわが国各都市における中長期的な各種施策を構築することが重要であるように思えてなりません。
 共に頑張ろうではありませんか。

● 調査団今井副団長をはじめ団員の皆さん、北海道市長会事務局、添乗員の皆さんに心からお礼申し上げ報告といたします。



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