主 題 解 説

北海道都市学会会長 眞 嶋 二 郎 氏 

 皆さんこんにちは。
 企画担当側を代表し、私から今日の会議の主題と捉え方について基本的な説明をいたします。今日は勇壮な山笠に迎えられて会議が始まりました。先ほど芦別市長からもご挨拶をいただきましたが、皆様にはこのアトラクションを芦別市のまちづくりの一環として見て頂きました。
 今日のテーマは「人間尺のまちづくり――安定型社会に向けた『まち』の再生手法を考える」です。このテーマの意味と議論の展開のあり方を、3つの側面から説明します(図-1.参照)。第1点は「新しいまちづくりへ向けて」ということで、会議の導入部にあたり、なぜこのような会議を行うのかという基本説明に関するものです。第2点は本日の会議の論点である「都市問題会議のテーマ展開と今回の論点」についての説明です。第3点に「都市問題会議の開催方式」についてお話をします。
 その前に、会場の設定についてお話をしましょう。皆様は今日、この部屋に入ってちょっと一風変わっている雰囲気を感じられたとお思います。この部屋は元々が結婚式などのセレモニーを行う場です。ただ今は開会式というセレモニーが行われているわけですが、明日の全体会議もこの部屋を使います。普段、このような催物はこのような会場でなく、いわゆる教室スタイルの会場を使うのが一般的常識といえるでしょう。しかし、われわれはこの会場の条件を逆手にとって、この中で皆が輪になって語り合う場を設定しようと考えました。近年の北海道都市問題会議は、このように会場の作り方にも凝りながら、皆さんと楽しく議論をしていきたいという考え方で進めてきております。

1.新しいまちづくりへ向けて
 まず第1番目の「新しいまちづくりに向けて」の基本的な考え方についてお話します。例えば、北海道においても経済が非常に悪化した状態にあり、日本全体においてもたいへん厳しい経済状況です。あるいは、地方の小さなまちでは急速に人口減が進んできました。また、高齢化も進んできております。そのいった状況はひとつの現代社会を象徴する動きです。それをもう一度元に戻って、いわば高度成長期のような右肩上がりの生活に戻すわけにはいきません。そうすると、このような状況を踏まえながら来るべき21世紀に向け、われわれは新たな発想の展開をしながらまちづくりを行っていかねばなりません。今はそういう条件にあるかと思います。その場合一番大切なことは、このような状況に合わせてどのような目標・課題・しくみを考えるべきかということであります。
 1)新しいまちづくりの目標
 まず第1に新しいまちづくりの目標として掲げるべきテーマは「真に良い生活環境をつくりあげ、維持する」ということです。これは先ほど言いましたように、かつての成長型発想から転換し、現在の地方分権や高齢社会、あるいは持続型社会(最近目新しい別な言葉としては環境共生といいますが、生活環境条件を考えながら共に生きるという問題)、あるいは省エネルギー・省資源・省費用といったような問題へ向けて、ここに掲げる「真によい生活環境の構築」が基本テーマとなることを意味します。つまり、それは産業が先にあるのではなく、われわれの生活環境そのものをまず大切にし、それが新たな産業展開の基本になるという発想で考えていきたいと言うことであります。
 2)新しい方法論の出発点
 では、この会議のための新しい方法論の出発点がどこにあるかといえば、自らのまちの広い意味での資源や資質を知り、それを生かし、時間をかけて伸ばし改良する、こういった方法論を考える必要があります。つまり、高度成長期に代表されるような成長型発想からの脱却を図り、今までのどんどん新しいものを作る、専門的にはフローの世界といいますが、それから今あるものを大切にする、ストックの世界に移ろうということです。
 今から数年前、社会党の村山委員長が首相になりました。その時に政治の場面での55年体制の崩壊、あるいはそれからの脱却といわれていますが、われわれのまちづくりについても同様なことがいえるのではないでしょうか。その場合もう一つ重要なことは、真によい生活環境の構築とは、結局はわれわれの生活の質、専門用語ではQuality Of Life(QOL)といいますが、その生活の質を良くしよう、住民皆の生活の質を重視するということです。そうするとこれは、いわばトータルシステムとしての生活環境、住環境を大切にし、地域の人たちとのつながり、つまりコミュニティーを重視することに他なりません。
 3)そのための基本姿勢
 その基本姿勢としてどのように考えねばならないかというと、皆さんは「市民参加」という言葉を既にお聞き及びと思いますが、それをさらに進める発想と行動が必要です。私はこれを「全員参加型のまちづくり」といいたいと思います。これは市民がまちづくりに参加するということだけでなく、市民・行政・企業・専門家あるいはわれわれのような研究者が、お互いに手を結びあって、パートナーシップによってまちづくりを行い、支え合う地域社会をつくることになるのではないかと考えます。その場合、自治体行政の課題として、今までのようなやり方は卒業しなければならないのです。つまり、従来の行政の限界を知り、真の意味での役割は何か知ること、これはとりもなおさず行政主導型からの脱却ということになります。この問題を中心に据えた場合、自治体行政の本当の役割としての中心課題は、このようなまちづくりのための条件整備を行うことが第1に挙げられると思います。それを踏まえた上で、私が次にいいたいことは、むしろ「地域に入っていく」という行政側の積極的な姿勢、つまり今まで役所のデスクに泰然と腰掛けて向こうから来るのを待っているのではなく、自ら足を使って地域に入り込み、その中で皆と語り合い、本当に皆が求めていることを実感としても捉えながら新たなものを考え、行動して行くことだと思います。
 4)その基本条件と行政計画過程
 このような基本条件を考えていくと、基本的には先ほど述べたように「己を知る」、あるいは「わがまちを知る」ということで、その地域の持っている“宝物”を発見することが大切です。そして、それに付随する課題が何であるか考えるということです。その時に必要なことは「認識力」や「解析力」を持つことです。市民・企業等々、全員参加型にかかわってくる各主体がその「認識を共有」し合うことが必要になると考えます。さらにこれらを踏まえた上で、行政当局の「企画力」あるいは「計画力」、つまりつくる力の基本を固めることが必要です。今いった2つの認識力・解析力、あるいは企画力・計画力の段階で、われわれ研究者や専門家が協力するというパートナーシップが成り立つとよいと思われます。
 その場合、もう1つ重要なポイントとしては、的確な「情報の公開」が必要です。つまり、今までともすると問題があるとそれを隠そうとする姿勢があったと思います。しかし、問題は問題としてきちんと皆で把握し合い、どうすれば解決するか。あるいはそれらのことを論じながら、本当の地域のよさは何なのかきちんと知ることが必要です。「認識の共有」もこの情報公開があってはじめて成り立つものです。現在いろいろな面で情報公開が問題になっていますが、そういう視点で考えると非常に重要な意味を持っていると考えた方がよいと思われます。
 計画過程の面で見ると、昨年の稚内での都市問題会議の主題解説でも触れましたが、“3つのシコウ”の適切な段階過程が重要となります。第1は「考える思考」です。つまり、計画をつくることは行政の得意とするところだと思います。普通は、これを基に次の段階としてのもう1つのシコウ「施行」、つまり実際に事業展開する方向に一挙に飛んでしまいます。それによって今まで色々な問題を起こすことが少なからずありました。このことを考慮すると、それらの中間段階として、試すシコウ「試行」が極めて重要な過程として入らなければありません。先ほど述べた「地域へ入る」こと、そして入りながら自分達が考えていることを市民・企業に聞いてもらい、一方で住民の要求を直に聞き、必要に応じて手直しや具体的な解決策を共に考え、確認して行くことがこの段階の重要な仕事となります。そこでは、当然様々な問題が指摘されますが、最初に計画したものは絶対遂行しなければならないとかたくなに考えず、その過程の中でやりとりをしながら柔軟に対応することが大切です。そして、そこで本当に皆に歓迎されるものを確かめ、事業展開していくという考え方が大切です。私はこれらを“3つのシコウ”と標榜していますが、そういった対応が必要と考えます。
 もう1つ重要なことは、「モノづくりから人づくり、シクミづくり」と言う問題です。私の専門が建築ですから、モノづくりということに今までかなり携わってきました。しかし、モノづくりといっても、ものだけ作ってもだめです。例えば、われわれ専門家からすれば建築物が竣工するとそれで終り、と考える人が今まで多かったように思います。私は建築の中でも住宅の研究をしております。住宅という建物の完成は居住者にとっての出発点となります。その出発点から将来にわたってその住宅が、家族なり住んでいる人たちにとって常に良い状況をどのように保っていくか、その過程でどのような手直しが必要か、そういう計画の仕方や考え方が問題になります。その仕組み全体の出発点をわれわれは「人づくり・シクミづくり」といっていますが、その意味でモノづくりから人づくり、シクミづくりへ拡げて行く中で、計画や行政を考える必要があると思います。

2.都市問題会議のテーマ展開と今日の論点
 1)会議の展開方法

 そのようなことを考えながら、今日のテーマ「人間尺のまちづくり」に入っていきます。今回の論点、都市問題会議のテーマ展開にはどのような意味があるかを説明したいと思います。
 司会から本日は分科会、明日は全体会議の2部構成という案内がありました。しかし、私どもは3部構成と考えます。つまり、本日夕方に開催される「交流会」がただ単に挨拶を交わす場ではなく、分科会を踏まえた上で明日の全体会議へつなげる役割があると捉えます。昨年の稚内都市問題会議は、分科会と全体会議という2部構成で「みんなでつくるまちづくり・人づくり・仕組みづくりを考える」というテーマにしました。これは役割の議論をしたわけです。今年はそれらを踏まえながら新たな展開、つまり行政やまちづくりの中でいろいろなかたちで出てくる対象別の、難しい言い方をすれば機能論的なテーマへ展開しようということで、「人間尺のまちづくり――安定型社会へ向けた『まち』の再生手法を考える」を掲げたわけです。
 2)今回の基本論点
 このメインテーマの基本的な論点は、分権化時代の新たな地方の姿と、それに向けての展開方法を求めていこうということになると思います。
 @人間尺のまちづくり
 まずテーマについて少しお話します。「人間尺のまちづくり」について、われわれはすぐ安易に英語を使ってHuman scaleといってしまいますが、敢えて日本語にこだわったわけは、われわれが住んでいるのは日本であり、日本語として適切な言葉を使おうということです。この人間尺のまちづくりというのは、自分を発見する、自分のまちを発見することにはじまる新しい身の丈を考えた方向をいい、これを踏まえた展開への思いをこのテーマに込めています。
 A安定型社会へ向けた「まち」の再生手法を考える
 具体的に考えることは、サブタイトルに提示されている「安定型社会へ向けた『まち』の再生手法を考える」となります。昨年の稚内都市問題会議での役割論の展開を踏まえ、まちづくり課題の多面的な、しかしながら総合的にはお互いにつながる対象別機能論的テーマ、アプローチにつながっていくということを、全体とのかかわりを認識しながら考えていこうということが込められています。その場合、根本に据えられるべき課題は、先ほども延べましたが、地域の皆が誇れる文化的側面を踏まえた、トータルシステムとしての生活環境をつくることに他ならないと考えます。
 Bまちづくりの真の目標
 そこでわれわれはどのような展開をするかといえば、皆が生き生きと生活できることが第1に挙げられる事柄です。第2には、自分達の地域に誇りを持てるということが挙げられます。第3には、自分たちの可能な力を寄せ合い、時間をかけてゆっくりとつくり、直し、守っていくことが必要です。
 具体的に説明しますと、私の専門は建築ですが元々都市計画から出発しております。そこでの例を引いて説明しましょう。例えば近代都市計画の中で、皆さんも名前だけは聞いたことがあろうかと思いますが、イギリスのニュータウンというものがあります。ここでは近代都市計画の1つの画期的な展開が見られます。この出発点の時期は産業革命が進んできた時期にあたります。農村からどんどん人間が集まってきて、その過程で街中に低賃金の労働者が増加し、彼らの住宅地が環境衛生面では大変悲惨な状態になりました。それに対してイギリスは貴族の国ですから、心ある貴族の人たちが何とかしなくてはと運動を展開しました。それらに遡行する学問領域として、田園都市、そしてニュータウンという新しいまちづくりの考え方が出てきました。そこで考えられたことは、生活環境をどううまくつくっていくか、それと職場を密接に考えようというものでした。われわれはそれを学生時代から教科書で学びましたが、私はある有名なニュータウン、クロウリーというところを、計画が発表されてから20年後に訪問しました。でもまだ建設が続いていました。このことは日本では考えられないことです。なぜ20年もの時間をかけて延々と造っているのかという質問をすると、「急いでつくったところで所詮はすぐ色々な問題が出てくる。だから、じっくり時間をかけてつくりながら、問題点があれば直しながらやっている」という答えでした。私はそこで冷水を浴びせられたような感じがしましたが、翻って日本の場合を考えてみると、住宅団地、特に大規模なものでは短時間であわててつくってしまいます。そうすると、例えば出来上がったときはすごく新しくて素晴らしく、新婚ほやほやの夫婦が大勢入居します。ところが、1・2年経つといっせいにベビーブームになります。その次に起こってくるのが幼稚園不足の問題です。これが、小学校・中学校・高校と進み、10数年経つと今度はいっせいに高齢化が進みはじめます。20年かけてゆっくりつくるということは、毎年入ってくる家族によって、人口構成がバランスよくなっていきます。そのことを先ほどのイギリスのニュータウンが語っているということに気付いたわけです。
 3)分科会での展開への期待
 そういったことから、われわれは今自分が置かれている状況を的確に判断し、じっくり時間をかけて解決策を考えていく態度が必要ではないかと考えます。これらのことを頭に置きながら、具体的にはメインテーマにつながる3つの分科会を開きます。ここでは、具体的な経験の報告と、これらを素材とした具体的な議論を、全員参加型の議論によって行います。従って、より多くの参加者の発言を期待しています。
 @第1分科会: 市民文化による「まちおこし」
 各分科会について具体的に説明すると、第1分科会は「市民文化による『まちおこし』」というテーマです。これは前述のように、基本的には自分たちのまちの伝統と個性を大切にしようという活動報告です。それを通じて市民相互のきずなを深め、まちへの愛着心を育むことは、まちづくりの最も基本的な出発点ではないかという発想で展開します。この分科会では、話題提供として本日オープニングセレモニーで拝見した健夏山笠について、「山笠のまちづくり」というテーマで滝澤恒宏さんにお話を伺います。もう1つは、函館の市民野外劇場を指導してこられたフィリップ・グロード神父さんに、「町おこし」をテーマにお話し頂きます。このセッションのコーディネーターは、札幌大学の宮良高弘先生にお願いします。この分科会の記録担当は芦別市の湯浅哲也さんと関谷誠さんです。お二人には、明日の全体会議では各分科会の報告者を務めていただきます。皆さんは他の分科会にも興味があるでしょうが、全体会議の最初にそれぞれの分科会で何が話し合われたか報告がありますので、1つの分科会に腰を落ち着け、単に話を聞くだけでなく議論に参加して頂きたいと思います。そのための仕掛けとして、記録担当者がおられるわけです。
 A第2分科会: 連帯による住みやすい環境創出
 第2分科会は「連帯による住みやすい環境創出」のテーマで展開します。これは私が前述しましたように、真によい生活環境の構築こそが、これからのまちづくりの最も重要な部分であるという内容に直接つながるお話です。ここで問題にするのは、そこに住んでいる人たちのふれあいや温もり、あるいは小さなまちであっても目指すべき新たな道は何なのか、といったことを市民サイドから考えます。この話題提供は、「環境にやさしい福祉のモデル都市を目指して」として、鵜野敏弘さんに芦別市での経験をお話し頂きます。また、全道的な活躍をしておられる三島敬子さんには「北海道・花ネットワーク」というテーマでお話し頂きます。このセッションのコーディネーターは都市計画コンサルタントの矢島建さんに担当して頂きます。矢島さんは、道内の多くのまちづくり計画に携わり、オーストラリア・シドニーでの仕事の経験もあり、北海道景観アドバイザーも努めておられ、北海道都市学会の会員でもあります。記録担当は芦別市の桑山高明さんと高橋勝彦さんにお願いします。
 B第3分科会: 地域を活かした新しい産業展開
 第3分科会は、「地域を活かした新しい産業展開」というテーマで、人や風土を活かす視点、あるいは地域の産業にとって、地域の人的資源がいかに大切かを考えた上で、どのように優秀な企業が展開してきたかというお話をしていただきます。1つは今日のオープニングセレモニーの市長挨拶にもありましたように、北日本精機の小林英一社長から「グローバル経済における北海道地方都市の立地条件を考える」というテーマでお話し頂きます。第2の話題提供として、農村を舞台として中野さんに「夢いっぱいの農村を舞台に」としてお話を伺います。このセッションのコーディネーターは、立教大学の廣江先生にお願いします。廣江先生はかつて北海道におられ、今も中小都市の経済問題について研究しておられますが、わざわざ東京からお越し頂きました。実は、昨日のうちに札幌に来られる予定が、羽田が洪水で閉鎖になり今朝早くに出られ、先程到着されました。われわれとしては間に合うかどうか心配しておりました。このセッションの記録担当者は、芦別市の稲場さんと高橋克嘉さんにお願いします。以上が第2番目の今日の論点とテーマの説明でした。

3.都市問題会議の開催方式
 第3番目に、都市問題会議の開催方式について解説します。
 1)全員参加型の仕組みと分科会/交流会/全体会議方式
 まず1つめとして、全員参加型の仕組みと、分科会から交流会そして全体会議へ至る開催方式について説明します。われわれはまず全員参加型の仕組みとして、分科会という形式で色々な人が色々なかたちで話ができるような舞台設定を考えました。また、先に述べたように、これを全体会議につなげるしくみとして、交流会があります。これはただ単にアルコールを飲みながら挨拶をし合うだけでなく、分科会で時間が不足し話せなかったことをさらに深める、あるいは飲みながら本音の話をする場です。お互いに全道各地から集まっているのですから、これからどんなことを考えているか、そういう意味で情報のネットワークづくりの場として考えています。この分科会/交流会/全体会議方式は、多面的なアプローチを共通に認識しようという仕掛けで、その意味では極めて贅沢な展開方法だといえます。
 もう少し詳細に説明します。それぞれ3つの分科会については具体的に説明しましたのでご理解されたと思いますが、各テーマによる事例報告をもとに、これを踏まえた上で突っ込んだ議論を行います。その過程で具体的な認識や思考をつかんでいくという意図があります。2つめの交流会は、分科会と全体会議を結び付ける場であり、この中で参加した全員が知り合える場です。いわば、分科会を踏まえ、さらなる、しかし気軽な議論の展開をする場と考えたいと思います。全体会議は、全分科会を踏まえてそれらに共通する新たなまちづくりの考え方、あるいは方向性を確認し合うものです。明日の全体会議もこの会場を使いますが、本日と変わった会場の設定をします。「囲み型形式」といっていますが、これによって総合的な考え方の議論が展開する場を意図しています。この全体会議を取り仕切る総合コーディネータを、北海道都市学会・杉岡直人理事と中原宏理事のお二人にお願いします。さらに、各分科会等のサポーターとして北海道都市学会の理事級の方々に関わってもらおうと考えています。
 芦別市のスタッフの方々も、今年度になってから大変な努力をされ、今日に漕ぎ着けました。私も主催者の一員ではありますが、深く感謝の意を表したいと思います。また、このような会をバックアップし陰で支えてくださっているのが北海道市長会の事務局の方々です。この方々の活躍があってはじめてこの会が開かれるていることも知っていただき、皆さんとともに感謝を申し上げたいと思います。

 2)全員参加型の条件
 では、全員参加型の条件について説明します。この会議は、多くの方々の実質的な参加を考えています。それが具体的に表に現れた事柄として、例えば私がお話しているそばに手話通訳の方がおられます。また、女性の皆さんにもご参加頂きたく、託児所も設けています。このような縁の下の力持ちによってこの会議は開催されているのです。
 次に、一人一人の発言時間をなるべく短くし、より多く方々の発言が出来るようにし、また積極的な発言を望みます。これは、多くの人の考えを吸収し、自らの認識と思考を豊かにしようという仕掛けです。分科会にしろ全体会議にしろ、恐らくコーディネーターの方が、一般の方々の発言をだいたい3分に限定し、タイムキーピングをします。この際だから大演説をしたいという方がおられるでしょうし、それはそれで結構ですが、時間はその人のためだけにあるのではなく、皆のためにあるのです。皆で議論をし、考えを分かち合うという寛容な気持で、自分が話したいことの要点を3分で素早くお願いします。それによっていろいろな人から発言を得たいと思います。
 3つめは、気軽ではあるけれど真剣な議論をしようということです。今、私もそうしていますが、裃を脱ぎ捨てて気軽な服装でやろうということです。要するに、気軽ではあるが真剣な議論をしようということで、「ノーネクタイで集まりましょう」とご案内申し上げました。会場を見るとかなりの方がネクタイをしておられますし、それはそれでひとつのスタイルですが、分科会の際にはネクタイを外して議論しましょうということを訴えたいと思います。
 3)都市問題会議の目指すもの
 次に、都市問題会議が何を目指しているかです。今日は各市の市長をはじめ議員の方もおられますが、各地域あるいは町村の職員の方もかなりいらしております。そういう意味で職員の研鑚の場であると同時に、市民の参加を仰ぎ、皆が認識を高め共有することが、この会議が目指す1つの姿です。もう1つは、出席者全員の主体的な参加が可能になるよう、いろいろなかたちの参加型の設定をしています。このことについては、本日の今までの話の中で触れてきました。
 最後に、手づくりの会議運営であることを心がけています。これは、参加型の会議運営の一つの重要な条件でもあります。例えば、本日の総合司会も市の職員です。つまり、専門の司会業の人に頼むのではなく、皆でそれぞれが持っている特長を生かしながら関わっていくという中で、この会議が開かれるべきと考えます。手づくりではあるけれど、本当のきちんとした議論を行うということで、今日から明日にかけての都市問題をぜひ楽しんで頂きたいと思います。これが、この会議の企画を担当した都市学会からのメッセージでもあります。


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