秋のヨ−ロッパ4カ国を訪ねて

函館市市民部長 吉田 明彦



はじめに
 北海道市長会の第26回海外都市行政視察調査団の一員として、海外派遣研修に参加させていただき、貴重な体験ができたのは上司、同僚の深いご理解の賜であり心から感謝いたしたい。
 期待と少々の不安をもっての旅であったが10月12日(土)の早朝、千歳空港での今井副団長の力強い「決意表明」により、我々8名の旅が始まった。

《オランダ》
 成田空港を出発し11時間半、アムステルダムのスキポ−ル空港に到着する。
 17世紀、東インド会社の本拠地として隆盛をきわめた港町アムステルダム市は現在もオランダ経済の中心地として発展しており、また、水の都と言われる所以の扇状に張り巡らされた運河、路面電車さらには往時を偲ばせる歴史的な建造物の数々(建物の高さ,壁の色等が厳しく規制されている。)が紅葉を迎えた樹木と見事に調和し実に美しい佇まいを見せていた。特に、運河クル−ズで船上から眺めた街並みは今まで映像や雑誌でしか見ることができなかったヨ−ロッパを肌で感じ大いに感激した。
 また、オランダの文化、芸術は世界的に高い水準にあり美術館や博物館も1,000近くあるとのこと。我々もアムステルダム市にある国立博物館や国立ゴッホ美術館を見学し、レンブラントの「夜景」やゴッホの「ひまわり」、「自画像」等優れた作品を多数鑑賞でき芸術に疎い自分であるが圧倒される感覚を覚えた。
 さらに、アンネ・フランクの隠れ家を訪れたが、第二次世界大戦中のナチスによるユダヤ民族弾圧の恐怖を痛感し、つくづく平和の尊さを感じた。

《フィンランド》
 オランダを離れ空路、森と湖の国フィンランドに向かう。国際線とはいえ小型機で少々不安であったが無事ヘルシンキに到着。
さすが北極圏の国、10月中旬というのに気温はマイナス以下で雪もちらついていた。
 フィンランドは国土の68%が森林、10%が湖沼で約190,000湖あるという。まさしく森と湖の国である。樹木も松や白樺が多く何となく北海道にいる錯覚に陥った。
 我々が宿泊したヘルシンキ市は、人口約56万人、街並みは永年ロシア支配下に置かれていたことから、ロシアの名残を残す建物が多く見られた。また、港の近くの市場で「寿司屋」を見つけ、「日本食にありつけた」と全員で食べたが旨さはイマイチで寿司はやはり日本と改めて認識する。
 産業クラスタ−の調査で訪れたフォルサ市の概要を熱心に説明してくれたタパニ・ベンホ市長は、2ヶ月前に就任したとのことであるがここでは市長を新聞広告で募集し多数の応募者の中から議会が選出することになっている。お国の違いを感ずる。

《スウェ−デン》
 夕暮れのヘルシンキを離れ豪華客船「バイキングライン」で翌朝ストックホルムに到着する。船内はレストラン、カジノ、免税店、サウナ等があり、快適そのものであった。生まれて初めてカジノに挑戦し5千円ほど負けたが楽しい思い出となった。
 今年、750歳を迎えた首都ストックホルム市は大小14の美しい島からなっており、特に1番大きな旧市街地である南の島の展望台からの景観は抜群であった。また、ノ−ベル賞の授賞パ−ティ−で有名な市庁舎を訪れたが、その重厚で優美な建物とともに「黄金の間」の装飾に使われている1800万枚を超える金箔のモザイクは圧巻であった。
 今、日本で時の人となっているノ−ベル化学賞受賞者田中耕一さんもここで晴れの日を迎える。

《スイス》
 最後の訪問国スイスはぜひ一度訪れて見たいと思っていたがイメ−ジどおり素晴らしい国であった。天気も快晴、ヨ−デルを歌うバスの運転手の名ガイドを聞きながらチュ−リッヒ空港から屋根のついた木橋で有名な「ルツェルン」を経由し、夕焼けに輝くアイガ−北壁の麓の町グリンデルワルドに到着する。山小屋風のホテルから見たアルプスの峰々は、時刻によって色、形を変え、その雄大な自然に何とも表現できない感動を覚える。
 翌朝、登山電車で標高4,158mのユングフラウヨッホに向かう。途中クライネ・シャイデックで乗り換え、切り立った岩盤をくり貫いたトンネルを進み岩盤内にある世界一高い山頂駅(3,454m)に到着する。猛吹雪のため展望台から外に出ることが出来なかったが、折角来たのだから記念の写真だけは撮ろうと外に1歩出たが突風で吹き飛ばされそうになり、慌てて中に戻ったが居上氏に写真だけはしっかり撮っていただいた。
 折しも、この日は自分の誕生日だったので山頂の郵便局から家族に記念の絵葉書を出す。生涯忘れることの出来ない思い出となり、改めて訪問できたことに感謝した。余談であるが山頂に日本の赤い郵便ポストがあったことには少々驚いた。それだけ日本人が多く訪れている証であるとつくづく感じた次第である。

おわりに
 この度の視察でそれぞれの国の歴史や文化を学び、またひとつ自分の財産を増やすことができ心から感謝しております。また、親松団長はじめ団員の皆様と楽しくそして有意義に過ごした12日間は生涯忘れることのできない思い出として心に残っております。今後もこの貴重な体験を生かし微力ながら郷土発展のため努力して参りたいと考えています。



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